▶新築住宅の住宅性能表示制度について
1.新築の「建設」や「購入」のときに役立つ
2.「安心」が一番!
3.新築住宅の「住宅性能表示制度」における10分野のモノサシ
1.新築の「建設」や「購入」のときに役立つ
☛同じ基準で性能を比較できる
パソコンやマイカーなどを購入するとき、その商品のカタログなどで情報が確認できるので、比較検討が簡単ですよね。
住宅の場合でも、「地震に強い家」「省エネの家」など、その住宅の特徴が書かれていることがありますが、これらの性能は、ハウスメーカーや販売会社によって「強さ」や「省エネ」の定義が異なっていることが多く、比較が困難でした。
しかし、新築住宅の性能表示制度を使って建設された住宅であれば、住宅の性能が同じ基準で評価されているので、性能の比較が可能になります。
☛希望する性能レベルを指定できる
【注文住宅の場合】
新築住宅の性能表示制度を使えば、「耐震等級は3」や「維持管理対策等級は2」などのように様々な性能を分かりやすい数値(等級)で指定することができるばかりではなく、指定どおりにできているかどうかを専門家がチェックしてくれます。
【分譲住宅の場合】
分譲住宅の場合も、性能表示制度を利用していれば性能が分かるので、注文住宅の場合と同様に自分の希望にあった住宅を選ぶことができます。
【評価書を契約書に添付すれば、評価した性能が契約内容となります。】
新築住宅の場合、住宅供給者が契約書面に住宅性能評価書やその写しを添付した場合や、消費者に住宅性能評価書やその写しを交付した場合には、住宅性能評価書に表示された性能を持つ住宅の建設工事を行う、若しくはそのような住宅を引き渡すことを契約したものとみなされます。
2.「安心」が一番!
☛住まいの性能が等級や数値で分かりやす表示されているので「安心」
「地震などに対する強さ」「火災に対する安全性」「省エネルギー対策」など10分野の性能項目について、等級や数値で表示します。外見からでは判断できない建物の性能の違いが、専門知識がなくても分かりやすく理解できます。
ただし、住宅の性能は、様々な要因によって設計段階での予測の難しいものもありますので、住宅全体の性能を直接の対象とするのではなく、住宅のうち特定の部分の性能や、具体的な対策の程度に置き換えて、基準を設定している場合があります。また、室内空気中の化学物質の濃度については、設計段階での評価が困難ですので、完成段階のみの表示対象としています。表示される等級や数値などは、このようにして設定した評価方法基準に従って評価された結果であり、この範囲に加えて何か特別な約束、例えば居住者の実感や実測結果の程度についての保証を行うものではないことをご理解下さい。
また、住宅の性能は、完成した時点から、時間とともに変化します。このような変化が進む速さや程度を正確に予測することは困難です。評価方法基準により評価された内容の多くは、あくまでも、評価を行った時点(完成段階)のものであり、このような経年変化の影響を考慮したものとはなっていませんのでご注意下さい。
☛第三者機関の評価員が性能をチェックするので「安心」
評価は、国土交通大臣に登録を行った登録住宅性能評価機関(以下「評価機関」といいます。)に所属する評価員が行います。しかも、設計段階のチェック(設計住宅性能評価)と建設工事・完成段階(建設住宅性能評価)のチェック(一般的に4回の検査)があり、求められている性能どおりに設計がなされ、また評価を受けた設計どおりに工事が進められているかどうかをチェックします。
☛万一のトラブルにも専門機関が対応してくれるので「安心」
建設工事・完成段階のチェック(建設住宅性能評価)を受けると、万一、その住宅の請負契約又は売買契約に関連するトラブルが起きても「指定住宅紛争処理機関」が迅速・公正に対応してくれるので、安心です。(1件につき1万円でご利用になれます。)
指定住宅紛争処理機関は、国土交通大臣が指定した機関で、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関です(全国各地の弁護士会が指定されています)。
☛住宅ローンの優遇や保険料の割引あり
建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅は、民間金融機関や公共団体の住宅ローンの優遇を受けられる場合があります。
また、地震に対する強さの程度に応じた地震保険料の割引などもあります。
住宅性能表示制度を利用した新築住宅で、一定の要件を満たすものについては、住宅金融支援機構提携フラット35に係る手続きの簡素化等を受けられます。
3.新築住宅の「住宅性能表示制度」における10分野のモノサシ
☛外観から分かりにくい性能を優先
新築住宅における性能の表示項目には10分野32項目(必須項目4分野9項目)があります。これらのモノサシは、住宅の外見や簡単な間取図からでは判断しにくい項目が優先的に採用されています。
☛すべての分野の等級が最高等級である必要はない
等級を上げるとその分費用が必要です。また、窓などの開口部分を広くすると地震などに対する耐震等級が低くなるなど、10分野の性能の中には、相反する影響を与えるものもあります。最低等級である等級1は建築基準法程度の性能として設定されていますので、どんな建物の性能を希望するのか、また、それに掛かる費用を考慮しつつ、どの性能を重要と考えるかが住宅性能の決め手となります。
☛10分野のモノサシ
① 地震などに対する強さ(構造の安定)
耐震等級には、1~3の等級が定められています。簡単に言うと、等級1は「倒壊しない」レベル、等級3は「繰り返し地震が来ても住み続けられる」レベルとなります。
ちなみに2016年の熊本地震では、震度7の揺れが続けて2回発生し、建築基準法の耐震基準をクリアした建物にも倒壊した例が見られました。(耐震等級3の建物の倒壊はゼロ)
等級1:建築基準法と同等の耐震性能で、震度6強~7程度の地震でも、即倒壊しない。ただし、大規模修繕や建て替えとなる可能性あり。
等級2:建築基準法の1.25倍の耐震性能で、震度6強~7程度の地震でも、一定の補修程度で住み続けられる。学校や避難所などの公共建築物レベルです。
等級3:建築基準法の1.5倍の耐震性能で、震度6強~7程度の地震でも、簡易な補修程度で住み続けられる。消防署や警察署などの災害復興の拠点となる防災施設レベルです。
②火災に対する安全性(火災時の安全)
住宅の中で火事が起きたときに、安全に避難できるための、燃え広がりにくさや避難のしやすさ、隣の住宅が火事のときの延焼のしにくさなどを評価します。
③柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
<木造の場合>
住宅に使われている材料は、時間が経過するにつれて、水分・湿気や大気中の汚染物質などの影響を受けて、腐る、錆びるなど、劣化します。
その結果、住宅をそのまま継続して使用することが困難になって、修繕や建替えをすることになります。
この基準は、材料の劣化を軽減する(劣化の進行を遅らせる)ための対策がどの程度手厚く講じられているかを評価するものです。
劣化対策等級には1~3までの等級が定められています。等級3では、3世代にわたって住み続けられる基準が定められています。
等級1:建築基準法に定める対策で、構造部材等における建築基準法への適合。
等級2:通常想定される条件下で使用できる期間が2世代(約50~60年)以上で、外壁軸組における防腐・防蟻措置、土台、浴室と脱衣室、地盤、基礎、床下、小屋裏、構造部材等の基準への適合。
等級3:通常想定される条件下で使用できる期間が3世代(約75~90年)以上で、外壁軸組における防腐・防蟻措置、土台の防腐・防蟻措置、浴室と脱衣室の防水措置、地盤の防蟻措置、基礎の高さの確保、床下の防湿・換気措置、小屋裏の換気措置、構造部材等の基準法施行令規定への適合。
④ 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
維持管理対策等級には1~3までの等級が定められています。主に配管の点検や補修をしやすくするための措置について定められています。
<※一戸建ての専用配管(給排水・ガスなど)についての基準>
等級1:等級2~3以外
等級2:躯体(基礎や外壁など)を傷つけず、設備の点検・補修ができる。
配管をコンクリートに埋め込まない等、維持管理を行うための基本的な措置。
等級3:躯体・仕上材(床や天井)を傷つけず、設備の点検・補修ができる。
掃除口及び点検口が設けられている等、維持管理を容易にすることに特に配慮した措置。
⑤省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
省エネ基準については、2013年(平成25年)の法改正で、外壁や窓などの「断熱性能」に加え、設備の性能や省エネを総合的に評価する「一次エネルギー消費量」基準が加わり、建物全体のエネルギー消費量を減らす基準が導入されました。
さらに現在では、「ZEH」「HEAT20」等、さらに高レベルな基準も制定されています。
⑥シックハウス対策・換気(空気環境)
接着剤等を使用している建材から発散するホルムアルデヒドがシックハウスの原因のひとつとされているため、接着剤を使用している建材などの使用状況を評価します。
建築工事が完了した時点で、空気中のホルムアルデヒド等の化学物質の濃度などを測定することも可能です(ただし、測定はオプションです)。
また、住宅の中で健康に暮らすためには適切な換気が必要なので、どのような換気設備が整えられているかについても評価します。
⑦窓の面積(光・視環境)
東西南北及び上方の5方向について、窓がどのくらいの大きさで設けられているのかを評価します。
⑧遮音対策(音環境)
主に共同住宅の場合の評価項目で、上の住戸からの音や下の住戸への音、隣の住戸への音などについて、その伝わりにくさを評価します(この評価項目はオプションです)。
⑨高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
高齢者や障害者などが暮らしやすいよう、出入り口の段差をなくしたり、階段の勾配を緩くしたりというような配慮がどの程度されているかを評価します。
⑩ 防犯対策
外部開口部(ドアや窓など)について、防犯上有効な建物部品や雨戸等が設置されているかの侵入防止対策を評価します。